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ボノボ夜話(後半)

   江口絵理@Eguchi_Eri

   #bonoboinfo

2019年3月24日にTBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」ゲストコーナーにお邪魔しました。今回はヒトにもっとも近い生きもの、ボノボについて。放送はTBSラジオクラウドで聴いていただくとして、番組で言いそびれたことやボノボ情報を毎晩Twitterで少しずつつぶやいたので、それをまとめました。Twitterモーメントはこちら

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3月28日 第五夜 

さて、今晩のボノボ話は「野生ボノボはどこにすんでいるか」。先日の日曜天国では私の説明が下手過ぎて「え、どこ?」と思った方が多いに違いありません。しかしtwitterなら私でも説明できます。ここです!

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ボノボはアフリカのコンゴ民主共和国にしかいません。隣にコンゴ共和国があるので「どっちだっけ」となりがちですが、ボノボがいるのは「民主共和国」のほうです。1971年から1997年まではザイールという国名でした。

ボノボがいるエリアは、首都キンシャサから数百キロ離れた国の中央部。東西南北をほぼ川に囲まれ、チンパンジーの生息地とは完全に隔てられています。

とはいえ野生ボノボはこの範囲のどこにでもいるというわけではなくて、人間がもともとボノボを狩る習慣がなかった地域の森のなかで暮らしています。

野生ボノボの調査地としてもっとも有名なのは「ワンバ」という村の奥に広がる森。ワンバでは、1974年から京都大学の研究者を中心に研究が進められてきました。

実は、野生ボノボの本格的な現地調査に初めて成功したのは日本人なのです。その日本人とは、京都大学(退官されていまは名誉教授)の加納隆至さんです。

うう、加納先生について語り始めたら止まらなくなる予感が……。今夜は、ボノボの生息域についてひととおりお話しできたというところで踏みとどまることにします。おやすみなさい~

 

3月29日 第六夜

オランウータンやゴリラ、チンパンジーなら、誰でも知っていますよね? でも、ゴリラやオランウータンよりもヒトに近く、チンパンジーと並んでヒトにもっとも近いというのに、ボノボの知名度の低さときたら。

 

オランウータン、ゴリラ、チンパンジーは昔から知られていましたが、同じくヒトに近い類人猿であるボノボが「発見」されたのはずっと後のことでした。だからボノボは「最後の類人猿」とも呼ばれています。

実は、ボノボは日本人にゆかりがあります。オランウータンもゴリラもチンパンジーも、現地調査に成功したのはみな欧米の人でした。でもボノボだけは、日本人研究者が成功しているんです。それが昨晩ツイートした、京都大学の加納隆至(かのう・たかよし)さんなのです。

 

なのに! 日本でボノボが全然知られてないなんて!なんというか、もったいない! という思いから、私は勝手に、ボノボ草の根PR隊員をやっているというわけです。

たとえば加納先生に「徹子の部屋」に出ていただいたり(徹子さんはボノボをご存じでした。さすが……)、ニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100人」という特集が組まれたときにささやかながら情報提供したり。

加納先生は表舞台を好まれない方なので、徹子の部屋に出てくださいとお願いしたら、「口下手だから嫌だ」と(笑)。なぬー! せっかく番組に交渉したのに!

しかし嫌じゃ嫌じゃと駄々をこねる加納先生を私は半ば無理やりひきずりだし、無事にご出演いただくことができました。のちに加納先生は私の著書のあとがきで、「収録に向かう私を見送る江口さんはまるでステージママのようだった」と回想されています。

このときの徹子の部屋の放送はとても好評だったと聞いています。(加納先生とのご縁も、ありがたいことにその後ずっと続いています。)が! なかなかどうして、ボノボの知名度はあがらない。

まあ、ボノボが知られにくいのには、例のユニークな性行動ゆえに真正面からはテレビで取り上げにくいのと(笑)、日本の動物園にいないというハンデも大きいんですよね……

では、どこに行けば見られるのか? おっと今宵もだいぶ更けました。その話はまた、明日の晩にでも。おやすみなさいー

 

 

3月30日 第七夜

さて、ここまでおつきあいいただいた皆さんには、ボノボが見たい! 会いたい!という気持ちが積乱雲のごとくむくむくと生まれつつあるのではないでしょうか。でも、こころ優しきボノボに会うには、どこに行けばいいのか。これけっこう、大ーきな問題です。

いまのところ、野生のボノボを現地に見に行くのはなかなか難しいんです。野生のオランウータンやマウンテンゴリラ、チンパンジーなら、一般の人が参加できるツアーがあるんですが。

私は「安住紳一郎の日曜天国」で2014年にボノボのすむ森に行ったとお話ししましたが、そのときは研究者さんの調査に同行させていただきました。

じゃあそういう特殊な機会でもない限りまったく望み無しかというとそんなことはなくて、この先、現地の受け入れ態勢が整えば、スタディツアー的なものが行われることはあるかもしれません。

野生ボノボの生息地はいわゆるアフリカの“奥地”ですが、先日ご紹介したボノボの孤児院「ローラ・ヤ・ボノボ」は首都キンシャサの近くにあって、しかも公開の施設なので、行けます。がんばれば。……とはいえ、まずキンシャサまで行くのが大変ですけども(笑)

アフリカまでは行けない、でもどうしてもボノボに会いたい、という方はヨーロッパやアメリカの動物園という選択肢も。ベルギー、ドイツ、イギリス、オランダ、アメリカなどなど……。

ただ、人間の言葉がわかるボノボ、カンジくんがいるのはアメリカの研究施設で、公開はしていません。アメリカでボノボに会える動物園というとサンディエゴ動物園あたりが有名でしょうか。

ボノボが日本にいたら会いにいけるのに!と思いますが、3月24日の日曜天国でお話ししたとおり、日本の動物園にボノボはいません。そのあたりのことは明日の晩にでも。一週間ほど続いたこのボノボ夜話、明日が最終回になりそうです。おやすみなさい~

 

3月31日 第八夜

さてさて、3月24日放送「安住紳一郎の日曜天国」ゲストコーナー出演から一週間にわたってお送りしてきた一連のボノボ夜話、今晩で最終回です。日曜日でもありますし、いつもより早くスタートしますね。

ボノボは日本の動物園にはいませんが、実は、日本にいないというわけじゃないのです。ボノボがいるのは、京都大学の研究施設「熊本サンクチュアリ」。熊本で暮らしているボノボたちはこんな顔ぶれです。

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ボノボ-サンクチュアリの住人

京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ

男女比はメス4人 対 オス2人。オスは……数の上でも負けていますが、喧嘩でも負けています。とにかくボノボはメス同士が結託するので、ふだんから連帯しないオスはかなわない。

そのあたりのことを熊本サンクチュアリ所長の平田聡さんが書いている文章がこちら。「熊本サンクチュアリのボノボたちでも,これまで何度か喧嘩がみられた。攻撃するのはいつも女性の同盟,攻撃されるのはいつも男性だ」。とほほ……がんばれオスたち。 

平田聡『ボノボの社会と認知研究』 出典:岩波書店「科学」2014年9月号

熊本サンクチュアリは研究施設なので、一般公開はされていません。でもきっと、ボノボの研究を通じて、新たにわかったことを私たちに教えてくれるでしょう。とくにここではずっと前からチンパンジーの研究が行われていますから、二種の違いが際立つはず。

たとえば、ボノボとチンパンジーを遠くから対面させてみたところ、そもそも見知らぬ集団を敵だと見なすチンパンジーはボノボたちを威嚇し続け、知らない相手であっても友好的なボノボは、チンパンジーに向かって穏やかに腕を伸ばしたりお腹を見せたりしたとか。

※平田聡『日本初のボノボ研究 』出典:岩波書店「科学」2014年4月号 

 

くうう、なんて無防備な愛されキャラなんだ! と私なんかはここにぐっときちゃうんですが、「ここでボノボとチンパンジーを混ぜたら、ボノボはこてんぱんにやられますね」という安住さんの声が聞こえるようです(笑)。たしかに、そうなったらボノボの命の保証はできない。

もちろん、熊本ではちゃんと両者は隔離して飼育されていますのでご心配なく。野生では観察されていない「道具使用」や、人間にしかないと思われていた「他者の心理を推測する力」について、科学的な検証が日々行われています。ボノボたちにできるだけストレスをかけないように注意して。

さてさて、約一週間のボノボ夜話におつきあいいただき、ありがとうございました。毎晩、長々と思い入れたっぷりに語ってきて、結局、自分が一番楽しかったかもしれません。

それでは、ボノボ夜話、これにておひらきとさせていただきます。もちろん、ボノボ草の根PR活動は今後も地道に続けてまいります。世の中にボノボファンが増えますように!

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