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ボノボ夜話

   江口絵理@Eguchi_Eri

   #bonoboinfo

2019年3月24日にTBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」ゲストコーナーにお邪魔しました。今回はヒトにもっとも近い生きもの、ボノボについて。放送のアーカイブはpodcastTBSラジオクラウド聴いていただくとして、番組で言いそびれたことやボノボ情報を毎晩Twitterで少しずつつぶやいたので、それをまとめました。Twitterモーメントで読む方はこちら

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3月24日 第一夜 

放送後に「あ、言い忘れた!」と思ったことがいくつかあったので、これから数日間、ぽつぽつと(そして暑苦しく)つぶやいていきたいと思います。

まずは、私の大好きなボノボオスのしぐさについて。ひとつは、放送でもお話しした「尻つけ」です。オスの間で「すわ喧嘩か!」と緊張が高まったとき、二人がくるりと背中をむけあってお尻をくっつけ、手打ちとします。こうして書いていても冗談としか思えない。

そしてもう一つは「枝ひきずり」。「オレは強いぜ!」とか、「こっち行こうぜ」とアピールする行動です。しかしその実態は、葉っぱのたくさんついた大きな枝をずるずるひきずって走る……だけ。それだけ。

ちなみにチンパンジーの「オレは強いぞアピール」はすさまじいです。すごい勢いで走り回り、木の幹や根を激しくたたいたりけとばしたり。目の前にいたら、チンパンジーでも人間でも突き飛ばされます。暴走機関車です。なのに、ボノボときたら……枝をずるずる。

ボノボオスが枝をひきずって、「そろそろみんなで向こう行こうぜ!」と移動したい方向を示しても、ほかのボノボからはしばしば無視されるらしい(笑)。でも私は乱暴な示威行動より、いまいちなんの役に立ってるんだかわからない枝引きずりが好きです。

 

3月25日 第二夜 

番組で「人間の言葉を理解するボノボもいる」とお話ししましたが、そのボノボとはカンジくんです。ご存じの方も多いかと。彼はテレビゲームのパックマンのルールを理解し、遊ぶこともできるんです。

30代以下の方には「テレビゲーム」も「パックマン」も伝わらないかも、という不安にかられ、検索してみたら……ありました!! これがパックマンです。なつかしー

カンジくんは実にいろんなことができるボノボで、人と一緒に森に散歩にいって、ひとりで乾いた枝を集め、積み上げてマッチで火をつけ、細い小枝を探してきてその先にマシュマロを刺し、火であぶってハフハフしながら食べたりもします。

うっそだあ、と思いますよね? BBC公式Youtubeチャンネルの動画をどうぞ

ボノボ

Bonobo builds a fire and toasts marshmallows - Monkey Planet: Preview - BBC One

 

3月26日 第三夜

人間の言葉を理解し、自分で焚火を起こしてマシュマロあぶって食べるボノボのカンジくんは、そのように「調教」されているわけではなく、常に「やるもやらないもきみの自由だよ」という環境で暮らしています。というわけで今晩のボノボ話は、カンジの暮らしているところについて。

カンジがいるのは、アメリカのACCIという類人猿研究所。一緒に暮らしていた妹のパンバニーシャも人間の言葉の理解に長けていましたが、残念ながら早逝してしまい、いまはカンジを含めて5人のボノボがいます。テコという名の少年ボノボも人間の言葉を理解するようです。

ただ、カンジたちはたしかに図形文字が書かれたキーボードを使って意思疎通したり、英語をかなり正確に聞き取ったりはしますが、それで「ボノボは人間の言葉を理解するか」にイエスと言えるかというと、科学者の多くは懐疑的だと聞いています。この問いはなかなか難しいのです…

ともあれ、カンジたちの研究をしているスー・サベージ・ランボー博士の講演には彼らと緻密に意思疎通できている様子が動画で次々に出てきて仰天します。「ライターが使いたいなら私のポケットに入ってるわよ」(カンジ、博士のポケットからライターを取り出す)とか。

その動画はこちらです~

スーザン・サベージ・ランボー 天才サルを語る

@TED公式チャンネル(日本語字幕を表示できます)

 

3月27日 第四夜

「安住紳一郎の日曜天国」の放送で私は、ボノボは絶滅危惧種だとお伝えしました。主な理由は密猟です。密猟者につかまったものの、運よく生きて保護されたボノボたちが暮らしているのが、「ローラ・ヤ・ボノボ」と呼ばれる民間施設。コンゴ民主共和国の首都近郊にあります。

ローラ・ヤ・ボノボは、「ボノボの孤児院」ともいわれています。保護されるボノボの多くが赤ちゃんや幼い子どもなのです。大人のボノボは密猟者に殺され、肉として売られてしまうのですが、赤ちゃんはペットとして市場で売られ、そこで保護されるのです。

子どもボノボは、目の前で家族が殺されているので、保護されてもひどくおびえています。そこでローラ・ヤ・ボノボでは、子どもボノボひとりひとりに対してお母さん役の女性スタッフがついて面倒を見る、という形で子どもたちを安心させています。

4歳ぐらいまでは、この「お母さん」と、同じ年ごろの幼いボノボたちと、敷地内の“保育園”と呼ばれるところで過ごします。

私は2014年にローラ・ヤ・ボノボを訪ねましたが(ここは一般公開施設なのです)、子どもたちは「お母さん」に甘え、友達と遊び、ころげまわって元気いっぱい。

ボノボ

地球上で、一番ヒトに近いサル

江口絵理・著

そうえん社 2008年

活字が苦手、という方には関西テレビが制作したすばらしいDVDを。本編は野生ボノボのすむ森で何が起きているかを現地取材したドキュメンタリーで、特典映像としてローラ・ヤ・ボノボ(ボノボの楽園)が取材されています。

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子どもたちは赤ちゃん期を過ぎると、さまざまな年齢のボノボがいる大きな集団に合流します。実はローラ・ヤ・ボノボは一つの小さな山をまるごと敷地としていて、大人グループは、昼間は山で自由に過ごしているんです。食事やおやつは人があげていますが。

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さて、もっと話したいけど夜も更けてきたので、今晩のボノボ話はここまで。もっと知りたい、英語読めるぞという方はローラ・ヤ・ボノボの公式サイトをどうぞ~ 

Friends of Bonobos

英語苦手、という方は私の『ボノボ』という本にも書いてありますのでよかったら。店頭になくても出版社には在庫があるので書店でご注文を。

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